労務管理

2022年の最低賃金はどうなる?徹底分析&大予想

2022年最低賃金大幅引き上げ 解説&給与チェックの方法についてはこちら
※動画解説

 

特定社会保険労務士の石川です。

 6/28()に、第63中央最低賃金審議会が開催され、2022年秋頃からの最低賃金額の目安について議論が行われました。

 この中央最低賃金審議会(以下:中央審議会)というのは厚生労働大臣の諮問機関で最低賃金の決定権があるわけではなく、最終的には都道府県労働局長が決定するのですが、例年ほぼほぼ中央審議会が提示する目安どおりに改定されていることから、この中央審議会が提示する目安が最終決定額に大きな影響を与えています。

 では2022年度は最低賃金が上がるのか下がるのか、それとも据え置きなのか、経営者・労働者、ともに気になるところだと思います。

 ズバリ予想をしますと、「2.5%3%程度の引き上げになるのではないか」と予想しています。

 今回は、この予想に至った根拠を、各種資料・審議会の議事録や統計などを用いて説明します。

 

上がるのか下がるのか、それとも据え置きなのか

まず、「上がるのか下がるのか、それとも据え置きなのか」については、99%くらいの確率で上がると言って間違いないでしょう。

 少なくともここ20年、全国加重平均ベースで、最低賃金が下がったり据え置きになったりしたことはなく、コロナの感染が拡大し始めて社会が大混乱した2020年こそ1円刻みでしたが、安倍政権下の「骨太の方針」で「引き上げ年率3%以上・最低賃金1,000円以上」が明記された2016年以降は基本的に年率3%以上で引き上げられています。

 現在の岸田政権下においても、2025年度にも全国平均で時給1,000円以上を目指す目標を「新しい資本主義の実行計画工程表」に盛り込む方針となっており、基本的な方針は変わらないものとなっています。

 さらに、先般の第63回中央審議会の資料でもある「経済財政運営と改革の基本方針2022」でも、最低賃金の引き上げが重要な政策決定事項であること、物価上昇に対応するため賃上げの一層の拡大を図ることが明記されています。

加えて、6/7()に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」においても、概ね同様のことが書かれているほか、最低賃金の引き上げによって、いわゆる「106万円の壁」が解消されていくことが見込まれると明記されています。

106万円の壁」解消の部分については「ほんまにそれで解消される?」と個人的に疑問が残るものの、少なくとも政府は女性の就労を拡大するためにも最低賃金の引き上げは重要であるとの方針を示しています。

つまり、政府の方針としては、最低賃金については引き上げありきで、据え置きや引き下げというのは少々分が悪い事情があります。

そして、先般の第63回中央審議会にかかる厚生労働大臣から中央審議会に対する諮問文(こういうふうに審議してねという要請文的なもの)についても、先に上げた計画や方針に配意(配慮)した調査審議をするよう求めており、言い換えればこの方針に沿うように目安額を示してねということですので、よほどの天変地異がない限り引き上げは既定路線といえるでしょう。

 

引き上げ額はいくらになるのか

では、引き上げは既定路線として、引き上げ額はいくらになるのか?という疑問が浮かび上がります。

ここについて、引き上げ額についてはあくまで最低賃金審議会で議論すべきことが政府方針に明記されたことや、中央審議会の関連部会で委員の顔ぶれが同じの「目安制度の在り方に関する全員協議会」において、政府方針が中央および地方の最低賃金審議会における審議を実質的に縛るようなことがあってはならない」「時々の事情(最低賃金の議論において「時々の事情」は主に政府方針を意味する)は外して、データを根拠に算出した、今まで以上に納得できるような数字に基づいて、労使で議論する必要がある」という意見が企業側出席委員から出ていることなどから、客観的なデータ・統計に基づき、企業側・労働者側・そして中立的立場の公益委員の3者が納得できる水準を導き出そうという雰囲気が議事録などから感じられますが、やはり最終的には概ね政府方針に沿った流れになるだろうと考えています。

引き上げ幅については、2.5%3%程度になるのではないかと予想しています。

2021年時点の全国加重平均額が930円で、前述した「2025年度にも全国平均で時給1,000円以上を目指す」という政府目標を達成するためには、理論上、年率1.84%以上(※)で毎年推移する必要があるのですが、「じゃあ1.8%で」となると、ここ数年概ね3%ずつ引き上げられてきてかつ先述の政府目標に賃上げを大々的に謳っているなか、これまでより低い引き上げ率となると面子丸つぶれになってしまうため、やはり例年と同程度の引き上げ率は維持すべきと中央審議会としても考えるのではとないかというのが考えうるラインではないでしょうか。

※毎年10月頃に改定されるため2022年7月は2021年度扱いとし、2021年度全国加重平均時給930円、2025年度まであと4年、達成に必要な引き上げ年率をxとすると、
930×(1+x)4=1000
(1+x)=4√1000÷4√930
1+x=1.01830825…
x=1.830825…%
→達成には1.84%必要

 他方、客観的なデータ・統計からもみていきます。

 最低賃金引き上げの議論については、通常、「賃金改定状況調査」という政府統計を主に進められます。

 賃金改定状況調査のうち、すべての事業所の改定率と、比較的最低賃金に近い時給で働くことが多いパートタイマーの賃金上昇率を推移でまとめ、さらに地域別最低賃金加重平均額の推移を重ねたグラフがこちらです。

 昨年は、最低賃金が3%超上昇したものの、すべての事業所の改定率と、パートタイマーの賃金上昇率は鈍化してしまっているのが実情で、コロナの影響が大きく表れています。

では、給与の支払能力としての、企業の収益状況はどうでしょうか。

先述の「目安制度の在り方に関する全員協議会」において、参考とする資料の1つに挙がっている「法人企業統計」から、企業の経常的な利益である経常利益の全産業における前期比伸び率をまとめたのがこちらのグラフです。

2021.46期が大きく伸びていますが、これはマイナスだった前期比で伸びたに過ぎず、コロナ前水準に一旦持ち直した状況、ということが読み取れます。

ただそれ以降の伸び率がどんどん鈍化していて、コロナ前の期間同様、日本経済の根本的な問題なのでは?という気もしますが、大きく利益が伸びにくい状況が見えてきます。

一方、このデータ、見方を180°変えると「コロナ前水準まで持ち直しているんだから賃上げ可能だろう」という見方もできなくもないわけで、中央審議会においても、使用者側・労働者側・公益委員側でこれらのデータをどのように捉えるかは立場によって異なるのだろうという印象を受けます。

さらに、ウクライナ情勢や円安にともなう物価高騰も勘案されるでしょう。

「消費者物価指数」のうち、すべての品目における月次データ推移をまとめたのがこちらのグラフです。

直近、2022.5101.8となっており、前年同月比で2.4%物価が上昇しています。

したがって、労働者の生活費捻出という観点からも、少なくとも2.4%以上、概ね3%程度は最低賃金を引き上げる必要があるというふうに、中央審議会も考慮するのではないかと考えます。

そういった観点を総合的に勘案して、これまでの流れと政府方針に鑑み3%程度、統計のデータを悲観的にみる意見が多いときには若干下がって2.5%程度、という幅になるのではないかと考えています。

政府としては賃上げを促進するべく、業務改善助成金・賃上げ促進税制・ものづくり補助金での賃上げ加点項目などにより、賃上げの促進を図っていく方針なので、活用可能であれば、賃上げをするにあたって、これらの制度を活用するのもいいでしょう(※)

※助成金・補助金や税制は、制度改正や要件変更の可能性があるため、事前に必ず各制度の要項等で最新の制度・要件をご確認いただくか、専門家へご相談ください

 

2022年最低賃金大幅引き上げ 解説&給与チェックの方法についてはこちら

 

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