※動画解説
神戸の特定社会保険労務士・石川です。
コロナの終息の兆しが少しずつ見えてきたような…気がするここ最近、「経済の先行きが見通せないのでここ数年は採用を控えていたけど、アフターコロナを見据えて、少しずつ採用活動を再度活発化させたい」という企業は多いのではないでしょうか。
採用活動を行ううえで大切なのが求人票、私も顧問先企業さんが作成された求人票を添削させていただく機会がちょくちょくあるのですが、共通して「もっとこうすると良いですよ」とアドバイスすることがいくつかあります。
そこで今回は、その経験を踏まえ、企業がハローワークや求人サイトの求人票・求人情報を作成するにあたり、あらかじめ心掛けたほうがいいポイントを3つご紹介します。
当然、業種やその企業によって記載する具体的な内容やポイントは異なってきますが、今回業種・職種別の具体的なポイントまで踏み込むと長くなりすぎてしまうので、どの業種・職種でも共通して言える、どちらかというと「記載内容」ではなく書く前の段階、「視点」というか「心掛けるべきこと」についてお話しします。
今からお話しする内容をヒントにして書くと、良い求人票が作成できると思います。
1. 応募者を具体的にイメージする
1つ目のポイントは、応募者を具体的にイメージすることです。
巷の求人票を見ていて、微妙な求人票だなあ…と感じる求人票に共通するものって、条件だけ書いていて企業が求める人材像が見えないものか、逆に企業側の求めるイメージは固まっているけど理想を追い求めすぎというか現実を見られていないものかのどちらかという印象を受けます。
そもそもですが、求人は他人同士をマッチングさせるという点では、マッチングアプリやお見合いと同じです。
求人はその他人同士に介在するものが仕事、マッチングアプリやお見合いは恋愛や結婚というだけで、本質は似ています。
恋愛とか結婚の相手って誰でも良いわけではなくて、タイプがあるはずです。
たとえば、優しい人とか、誠実な人、一緒にいて落ち着ける人、家事ができる人とか、その他にも、人によっては顔やスタイルの好みとか、年収とか、職業・学歴とか…
そのような感じで、タイプというか、求める人物像をイメージしてみましょう。
会社の経営理念や経営計画があるならそこから落とし込んでみるのも有効です。
それ以外にも、募集時点における会社や募集部署の状況(スキルを身に着けてどんどんキャリアアップしてくれる人が良いのか、その業務を1人で回してくれていた人が退職するので、即戦力で主体的に動いてくれる人が良いのかなど)といった要素も考慮して、求める人物像をイメージしていきます。
このイメージはできるだけ具体的に行うほうが良いです。
求める人間性や仕事への態度は何か、気さくにコミュニケーションが取れる人が良いのか、どんどん質問してくれる人が良いのか、1人で黙々と業務をこなしてくれる人が良いのか、などなど、考えうるポイントを挙げていきます。
…といった感じで整理していくと、イメージが膨らんでくるはずです。
ここまでで膨らんだのが「理想像」としてのイメージです。
ただ実際問題、恋愛や結婚でも、何でもかんでも理想だけで突き進んでも上手くいかないことのほうが多いのと同様、この「求人」でも、先ほど挙げた「理想像」のポイントを、1つ1つ、どこまでなら妥協できるのか、これ以上は譲れないラインはどこか、というのを考えていきます。
そうして、理想を現実へ落とし込む作業を経ることにより、現実味があって企業の求めるニーズを充足できる人物像ができあがります。
2. 求職者の視点に立って記載内容を考える
2つ目のポイントが、「求める人物像、つまり求職者の視点に立って記載内容を考えること」です。
普段顧問先さんの求人票を添削して、「もっとこうすれば良くなりますよ」とアドバイスする内容で最も多いのがこれです。
「こういう人求む」「求人条件は~」といった企業側からの視点に終始していて、求職者のニーズに応える内容でなかったり、求職者が目にしても就業をイメージできなかったりするものが多いです。
一例としてこちらの求人をご覧ください。
求人条件が端的にまとまっている点は良いのですが、端的すぎて、求人者がなぜ転職活動しているのか、元を辿ればなぜ前の会社を辞めた・辞めようと思っているのか、新しい職場に何を求めているのか、新しい職場で働くにあたって不安なことは何かに応えている内容とは言えません。
また、求人内容を読んでも、その職場で具体的にどんな業務をするのかがまったくイメージできない内容となっています。
さらに言うと、PCスキルについても、具体的にどのレベルまで求められるのか具体的に記載されておらず、これを読んだ求職者は「どこまで求められるのかな…」と不安になり応募を躊躇ってしまいます。
ではどうすれば良いかというと、1つ目のポイントでイメージした「求める人物像」の視点に立って考えることです。
「求める人物像」の視点に立って、求人者がなぜ転職活動しているのか、元を辿ればなぜ前の会社を辞めた・辞めようと思っているのか、新しい職場に何を求めているのか、新しい職場で働くにあたって不安なことは何か、自身が求職者になったつもりで仮説を立て、落とし込んでみると良いでしょう。
加えて、仕事の内容や流れ、その他、その業務で求められるスキルはどの程度かも具体的に書くと、求職者が求人票を読んだときに、自身がその会社で働くイメージがしやすくなります。
たとえば、先ほどの例で挙げた事務職の場合、求人者がなぜ転職活動しているのか、元を辿ればなぜ前の会社を辞めた・辞めようと思っているのかについては、希望する仕事内容ではなかった、職場の人間関係に不満、時間拘束が長い、出産・育児・介護で退職したが、社会復帰できる時間的余裕が生まれたので復帰したいなど、さまざまな理由が考えられます。
新しい職場に何を求めているのかは、給与、働きやすい環境、アットホームで相談しやすい雰囲気、充実した研修体制、スキルを身に着けステップアップできる環境、産休育休や介護休業の取りやすさ、などが考えられます。
新しい職場で働くにあたって不安なことは、職場の人間関係、イレギュラーな業務や残業はどの程度あるのか、未経験やブランクのある人でも仕事に慣れることができるのか、などです。
そこで、こちらをご覧ください。
こちらの内容だと、先ほどのポイントを押さえられているし、読んで具体的な仕事内容が理解できるので、その企業で働くイメージがしやすいです。
また、求められるスキルについても具体的で、応募資格が明瞭になり、ミスマッチを防ぐことができます。
3. 熱意をぶつける
最後、3つ目のポイントは、熱意をぶつけることです。
どれだけ見やすい求人票を書いたとしても、来てほしいという熱意がこもっていないと無機質なものになってしまいます。
決して根性論や精神論ではなく、人が感情を持つ動物である以上、人の心を打つものは熱意だと私は思います。
当然ながら、労働基準法など最低限守るべき労働法を順守していないブラック企業でも、熱意だけぶつければ人は集まるかというと、そんなことはありません。
もちろん求人票で嘘をつくことはいけません、ミスマッチによる退職が増えて無駄な採用コストがかかるだけです。
法を順守し、従業員さんが働きやすい職場環境を整備したうえで、それらの情報を求人票に落とし込むことを当然の前提として、最後は熱意を伝えようということです。
最初は「てにをは」や日本語の細かいことは考えず、「いい人に来てほしい」という熱意を思いっきり求人内容にぶつけてみましょう。
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