コロナ解雇・直近の傾向と今後増加する業種は?

その他労働

↑↑↑

こちらの動画を観ながら読むとより読みやすいです

 

特定社会保険労務士の石川です。

先日、厚生労働省が、新型コロナウイルス感染拡大による解雇、いわゆる『コロナ解雇』の解雇者数が7万人を超えたと発表しました。

そこで今回は、政府発表の資料などから直近におけるコロナ解雇の傾向を分析し、今後どの業種でコロナ解雇が増加するのかを予想します。

 

直近の傾向

コロナ解雇に関しては、厚労省が毎週集計値を公表していまして、うち毎月最終週分の集計値で累計の推移をグラフ化したのが下グラフです。

(出所)厚労省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」 単位:人

上グラフを見ると、7月に3万人、9月に6万人を突破しています。

月末の値ではないのでグラフには載せていませんが、11/13(金)時点では71,121人に達しています。

業種別にみてみると、6月までは宿泊業が最も多かったですが、7月以降は製造業が1位となり、特に10月以降は他業種を大きく引き離しています。

(出所)厚労省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」 単位:人

では、毎月の増減を把握するために、累計ではなく単月の推移をみてみます。

各月最終週時点の累計値から前月最終週時点の累計値を差し引いた数値、つまり単月のコロナ解雇者数をグラフ化したのが下のグラフです。

(出所)厚労省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」 単位:人

月ごとに増減の上下があるものの、全体的にみると概ね減少傾向となっています。

依然8,000人を超えて予断を許さない状況ではありますが、5~7月に比べるとかなり減少してきていることから、事態は少しずつ回復へ向かっていることがわかります。

単月数値も業種別の内訳をみてみましょう。

(出所)厚労省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」 単位:人

おそらくこれだと線がごちゃごちゃしてわかりづらいと思うので、これらの業種を2つのグループに分けてみます。

このうち、一部の月で数値が少な過ぎて数値が公表されていないため正確な推移把握ができない運送業と物品賃貸業の2業種を除いて、8月以降概ね増加傾向となっているのが、サービス業・娯楽業・宿泊業・製造業の4業種です。

(出所)厚労省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」 単位:人

製造業は8月以降大幅に増加していて、かつ絶対数もダントツです。

一方、サービス業・娯楽業・宿泊業は、8月以降増加傾向ではあるものの、製造業に比べると伸び率は高くなく、絶対数もそこまで多くありません。

ちなみに、8月以降概ね減少傾向となっているのはこちらの5業種(飲食業・卸売業・小売業・派遣業・旅客運送業)です。

(出所)厚労省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」 単位:人

飲食業が9月に急増しているのが目立ちますが(これはおそらく7~9月にかけて大手チェーンを中心に大量閉店が相次いだことによるものだと私は推測しています)、10月にはかなり減少しているので、今後も大手チェーンを中心に閉店はあるものの、そこまで大きな増加はないのではと考えます。

 

今後増加する業種は?

さて、ここまで直近の推移・傾向を解説しましたが、おそらく皆さんが気になるところは、「これから増えるのはどの業種なのか?」だと思います。

ズバリ結論、というか私の考えを言うと、製造業、宿泊業、そして建設業です。

製造業の理由

まず、製造業については、現時点でもコロナ解雇者数が最も多い業種ですが、今後も一定程度増えていくものと推測しています。

その理由は…というと、こんな理由を挙げるとセコいと言われそうですが、そもそも就業者数が多いからです。

下のグラフは、総務省統計局「労働力調査」の産業別就業者数によると、すべての業種の中で製造業が最も多くなっています。

(出所)総務省統計局「労働力調査」2009.9時点 単位:万人

2位の「卸売業,小売業」は2つの業種を合わせた数値で、それよりも製造業のほうが多いんです。

それだけ母数が多いということは、1人が解雇される確率も高くなるため、これからも引き続き解雇者数が増える確率は高くなるわけです。

ただそれ以外にも理由はあります。

ちょっと元金融マンらしいことを言いますと、これは金属製品製造業や機械器具製造業に比較的多い傾向なんですけれども、これらの製造業というのは、景気変動と企業の業績にタイムラグが生じやすいんです。

たとえば、産業機械って高いものだと何億円もするので、発注前の段階で「この機械導入でどれだけ生産効率がUPするのか」「何年で投資を回収できるのか」を企業内で入念に検討します。

発注後も、3次下請けがつくった金属製品を2次下請けが小さな部品にし、2次下請けがつくった小さな部品を組み合わせて1時下請けが大きな部品にし、最終的に機械メーカーが大きな部品を組み合わせて産業機械にし…というふうに完成まではいくつもの段階と長い期間を要します。

なので、今回のコロナ禍のように、景気の悪化が起こって新規の発注が減少すると、導入検討の期間と自分たちの後に続く製造段階の分だけ、景気悪化と業績悪化にタイムラグが生じることになります。

したがって、金属製品製造業や機械器具製造業は、今後、業績の悪化が起こりやすくなり、その結果、倒産やリストラなどによる解雇が起こりやすくなるわけです。

宿泊業の理由

つづいて宿泊業の理由を説明すると、おそらくそろそろ資金ショートの第2波が起こるだろうからです。

コロナで春以降、宿泊客数が壊滅的に激減して、ホテルや旅館の倒産・廃業が相次ぎましたが、それでも持続化給付金・家賃支援給付金・コロナ融資などでなんとか資金繰りをやりくりしていたホテルが多かったはずです。

一般的にホテルや旅館は何十億もかけて建てられるため、建てるために借り入れた融資の毎月における返済額も莫大です。

これまで家賃支払いその他の経費に充てていた持続化給付金・家賃支援給付金・コロナ融資が底をつき、Go To トラベルキャンペーンで少しは改善したものの本格的な回復には至っておらず、業績が思ったよりも回復していないため追加融資を受けられないため、資金ショートを起こすホテルや旅館がこれから一定程度増加すると推測します。

資金ショートによって経営が危機的な状況になった場合、倒産やリストラやなどによる解雇が起こりやすくなるわけです。

建設業の理由

最後に、建設業の理由を説明します。

建設業と聞いて、「えっ?建設業?今までただの1度も名前が出てこんかったやん!!」と思われる方がたくさんいらっしゃると思いますし、そのようなツッコミの声が聴こえてきそうです。

たしかに、これまでは解雇者数が少なかったのですが、建設業というのは、製造業以上に景気悪化と業績悪化のタイムラグが発生しやすい業界なので、これから本格的に影響が出てくるでしょう。

一般的に、建物は構想から竣工までに数年~十数年を要し、下請けも幾重に続いているため、製造業以上に景気と業績のタイムラグが発生しやすい傾向にあります。

下の表は日銀短観の業況判断D.I.で、ざっくり言うと表の数値がマイナスだと景気が悪く、マイナス幅が大きくなればなるほど悪化が深刻化しているという指標なのですが、全産業が今年6月頃から深刻に悪化しているのに対し、建設業はまだ深刻化していないが一目でわかると思います。

(出所)日銀「短観」2020.9時点

ただし、その建設業も少しずつプラス幅が縮小していっていて、これから悪化に転じそうなのも読み取っていただけると思います。

ちなみに、参考までに宿泊・飲食サービスも載せていますが、この業種は全業種よりも早い今年3月頃から悪化が深刻化しています。

それに、11/13(金)版の厚労省コロナ解雇集計においても、これまで出てこなかった建設業が出てくるようになっており、これから建設業でコロナ解雇が増加する予兆がみえます。

(出所)厚労省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」 から一部画像を加工し抜粋

当然、政府もこれらの傾向・予兆は把握しているはずなので、今後の対策が待たれるところです。

 

YouTube Videos

関連記事

この記事へのコメントはありません。

YouTube Channel

Blog Categories