社労士いしかわ(神戸三宮社会保険労務士事務所の石川)です。
今回から、各業種の労務管理におけるポイントを簡単にご紹介したいと思います。
第2回は美容業界編です。
美容業界と一言でいっても、理美容・サロン・化粧品販売などに大別され、特にサロンはネイルサロン・骨盤矯正サロン・小顔サロン・メンズサロン・脱毛サロン・育毛サロン・・・など昨今のサービス多様化によりその種類は無数にあります。
しかし、労務管理の観点からいえば業界全体で概ね共通性があるため、まとめてポイントと企業が行うべき施策をご説明します。
美容業界における労務管理上の主な特徴
- 表向き業務委託契約、歩合制の従業員が多い
- 女性の割合が多い
- 少人数店舗が多いため、1人でも辞められると業務運営に支障が出やすい
- 労働集約的(機械化が難しい)
- 施術スキルを上げるため営業終了後に練習会や講習を行う店舗では就業時間が長時間
- 定休日が週1日となるため、完全週休2日制となることはない
- 従業員の独立による顧客引き抜きなどにおけるトラブルが生じやすい
【補足】
美容業界ではスタッフと業務委託契約を結ぶことにより労働基準法の適用除外としたり、報酬を歩合制にしたりする店舗をよく見かけます。
しかし、業務委託契約書を交わしているから即座に同法の適用除外とはなりません。同法では実態により労働者性を判断するため、業務委託契約書を交わしていても実質が労働者に近いと判断されれば同法が適用され、割増賃金などの規制を受けます。
報酬を歩合制としていても、労働者性が認められれば、歩合報酬÷労働時間が地域別最低賃金を下回る場合、最低賃金法違反となり50万円以下の罰金に処されます。
さらに、練習会や講習が職場の指示によるものであれば労働時間となり、法定労働時間を超えれば割増賃金の対象となるだけでなく、36協定を締結し労基署へ届出していなければ労働基準法違反となり6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。練習会や講習が職場指示なのか自主的なものなのか、オーナーとスタッフとの間で認識の相違があると労使トラブルのもととなり、スタッフの退職を招きやすくなってしまいます(そして人手が少なくなってさらに大変となり・・・最悪のシナリオです)。
加えて完全週休2日制でない場合、1日の所定労働時間が8時間であれば多い週で48時間となり、変形労働時間制を導入していなければ法定労働時間週40時間を超える8時間について割増賃金の支払対象となります。36協定を締結し労基署へ届出していなければその8時間について労働基準法違反となり6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されることに注意しなければなりません。
対策のポイントと成長を続ける企業の成功例
上の補足で述べたとおり、表向き業務委託契約などルールが曖昧な状態は大きなリスクを抱えていることをご説明いたしました。
したがって、対策のポイントとしては、
- 業務委託契約なのか雇用契約なのかをはっきりさせ、スタッフと認識を合わせておく
- 業務委託契約の場合、労働時間の拘束など労働者性が認められてしまうような指示をしない
- 雇用契約の場合、必要に応じて36協定や変形労働時間制の労使協定を締結し、労基署へ届け出る
- 練習会や講習に関しては労働時間でなくあくまで自主的なものであることを伝え、スタッフと認識を合わせておく
などが挙げられます。
実際に成長を続ける(美容室4店舗・サロン2店舗)とある企業では、
- 雇用契約、賃金は月給+歩合
- 社会保険完備
- 従業員個々がキャリアアップを感じられる研修プログラムの整備
- 充実した産休育休制度
を導入することにより、スタッフの就業満足度を上げることで離職を防止、結果スタッフの質を長期間にわたって維持しており、
顧客満足度向上→売上・利益UP→溜まった資金と豊富な人材を活かし多店舗展開
という好循環を生んでいます。
従業員雇用環境の整備、就業規則の作成、社会保険加入、36協定その他各種協定類作成届出など、貴店が好循環を生み出すための基礎づくりを神戸三宮社会保険労務士事務所でお手伝いします。
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