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老齢年金の繰上げ・繰下げ・通常受給 一番お得なのはどれ?

神戸三宮社会保険労務士事務所の石川です。

社会保険労務士をやっていると、「老齢年金は普通に貰うのと繰上げと繰下げ、一体どれがお得なの?」と聞かれることがあります。

この質問は非常に難しい質問です。

なぜなら、人は自分や他人の寿命がわからないからです。

老齢年金は長生きすれば繰下げがお得、短命なら繰上げがお得なのですが、相手がいつ死ぬのかわからないのに繰上げが繰下げかをアドバイスすることは至難です。

基本的に人はどのタイミングで人生の終焉を迎えるかわからないのに、通常受給か繰上げか繰下げかの難しい選択を60歳ないし65歳の時点で行わなければならないわけですから、通常受給・繰上げ・繰下げの選択は一種のギャンブルです。

では、自分が何歳まで生きるのかわからない状態で繰上げ・繰下げ(各1~60ヶ月)および通常受給の計121パターンからどのパターンを選択すべきなのでしょうか?

自分の寿命がわからない状況下では、お得になる確率が最も高いパターンを選ぶことが最適なチョイスと言えるのではないでしょうか。

今回は、変わった試みとして、計算シミュレーションによりお得になる確率が最も高いパターンが何なのかを考えたいと思います。

 

そもそも繰上げ・繰下げとは?

 

そもそも年金の繰上げと繰下げについてご存じない方のために、簡単にご説明します(ご存知の方は読み飛ばしてください)。

公的年金(国民年金・厚生年金)のうち、老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)と付加年金は通常65歳から支給開始される通常受給のほか、支給時期を早める繰上げと支給開始時期を遅くする繰下げのうちから開始時期を選択することができます。

支給開始の最初に選択し、一度行った選択は変更できません。

繰上げ・繰下げともに最大5年間の間で、1~60ヶ月の間の1ヶ月単位で支給開始時期を調整することが可能です。

繰上げをすると年金額が一定の割合で減額され、逆に繰下げをすれば一定の割合で増額されます(詳細は日本年金機構HP参照)。

減額・増額は死ぬまでずっと続きます。途中で通常の金額に戻ることはありません。

ですので、老後の人生設計・計画をもとに通常受給か繰上げか繰下げかを選択する必要があります。

 

シミュレーション:お得になる確率が最も高いパターンは?

 

ここからが本題です。

お得になる確率が最も高いパターンをシミュレーションで炙り出します。

ただし、1ヶ月刻みの計121パターンすべてをシミュレーションするのはさすがに大変なので、今回は以下のようにシミュレーションします。

  • 老齢基礎年金の2019年度新規裁定者向け支給年金額(満額)をもとに、繰上げ1~5年、繰下げ1~5年、通常受給の計11パターンをシミュレーション
  • 死亡時の年齢別に最も受給総額が大きいパターンを「年齢別ベストチョイス」とする
  • 60~100歳の間で年齢別ベストチョイスの数が最も多いパターンを「お得になる確率が最も高いパターン」とする

 

シミュレーション結果は下表のとおりです。

検証_page-0001

グラフに表すと下のようになります。

グラフ_page-0001

上表の緑色セルが年齢別ベストチョイスです。

表を見ると、受給総額の表なので各パターンにおける年額が支給開始年齢から2年目は2倍、3年目は3倍・・・と増えていくわけですが、60~71歳は5年繰上げが年齢別ベストチョイス、72歳になると年額の大きい4年繰上げに総額で抜かれます。

その後、概ね2年ごとに年齢別ベストチョイスが右へ移行していきます。

表から読み取れることは、主に下の4つです。

  1. 4年繰上げ~4年繰下げは長くても2年しか年齢別ベストチョイスがない
  2. 5年繰下げ(16年)または5年繰上げ(12年)が比較的多く年齢別ベストチョイスである
  3. 5年繰上げか5年繰上げかだと、男女の平均寿命は比較的5年繰下げの方に近い
  4. 通常受給と1年繰下げには年齢別ベストチョイスが1つもない

2.から、5年繰上げか5年繰下げを選ぶのが良さそうにみえますが、3.の理由に加え、今後医療技術の進歩などにより平均寿命が伸びることを考えれば、5年繰下げが最もお得になる確率が高いと言えるでしょう。

私自身も驚いたことは、4.の通常受給と1年繰下げには年齢別ベストチョイスが1つもないことです。多くの人が選びがちな通常受給は、実は一番損だということがわかりました。

ちなみに、老齢厚生年金でも繰上げ・繰下げ時の減額・増額率は同じですので、概ね同じ結果が得られるはずです。

 

加給年金・振替加算受給者は要注意

 

老齢厚生年金には一定の場合に加給年金が、老齢基礎年金には一定の場合に振替加算が支給されます。

支給要件等細かい説明は割愛しますが、加給年金や振替加算は、

  • 繰上げ期間には支給されない
  • 繰下げ待機期間にも支給されない
  • 繰下げしても増額されない

ことから、加給年金や振替加算が支給される方は上のシミュレーションと同じ結果にならないことに注意しなければなりません。年金事務所などでベストパターンを訊いてみましょう。

※加給年金と振替加算については日本年金機構HPを参照

 

まとめ

 

  • 最もお得になる確率が高いと考えられるのは5年繰下げ</span >
  • その次にお得になる確率が高いと考えられるのは5年繰上げ
  • 通常受給と1年繰下げは最も損する確率が高い
  • 加給年金や振替加算の受給者はこの限りでない

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新規適用(新規加入)手続、入退社にかかる手続、労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届提出、給与計算、将来の年金額を考慮した給与コンサルティングまで幅広く対応いたします。

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  • メール:info@kobesannomiyasr.com
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【今回のブログを書くにあたって】

インターネット上では、「年金は社会保障であるから、長生きするための手助けをしてくれることが大切なのであり、損得の視点で考えるべきでない」という意見が散見されます。

たしかにそういった意見は素晴らしいと思います。

しかし、保険料を拠出している以上、社会保障であれ損か得か、またどの選択が一番お得かを考えるのはごく自然なことであり、それは立派なファイナンシャル・プランニングだと私は思っております。

よって今回このような記事を書いたしだいです。

今回のブログをお読みいただきありがとうございました。

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